「硝子の傷跡」

背中に抱きしめた跡
熱いぬくもり
気まぐれな月の光の中で
迷子になった二人

叫び続けた声が重なる
忘れていた笑顔
いつのまにか消えていた
硝子の傷跡

「仮面の下」

孤独に魅入られた魂
綴られた言葉に情熱はなく
ただただ悲痛な叫びのみ
共鳴するはずの片割れは
その叫びにすら気づかない

彷徨い続けた道の
そのまた向こうに見える光さえ
届かないんだ
仮面の下のすでに薄汚れた悪魔

「狂い咲きの花」

お茶碗のような月が
山端に寄っかかって
静かに空を見上げていた

いつか二人で見たオリオンは
まだ眠らず
狂い咲きした花は
すでに枯れた

流した涙の果て
手放したぬくもり
冷たい鼓動

そしてまた
狂い咲きの花一輪

「夏の終わり」

あなたの深い愛に酔って
乱れた心
 
思いやり=我慢だと
勝手に誤解した僕

遅すぎた夏の終わり

「愛撫」

白く滑らかな首筋を
口唇でなぞる
意地っ張りな君を少し焦らして
ピンクに染まった頬に触れる
しがみつくようにまわされた
か弱い腕に応えて
僕も腰を抱き寄せる
      
それでも不安は不安のまま
二人の間を吹き抜ける

「小旅行」

ポケットにはなけなしの金とはがき一枚
行くあてのない気まぐれ旅行
町が見つかったらはがきを書くよ
「元気だよ」とたった一言
それから
そこに咲く一輪の花と

「電話」

ああ誰か
僕にかけて下さい
この広い部屋に
僕はひとり
ただ誰かと話がしたくて
僕以外の
命の音が聞きたくて


ああ誰か
僕にかけて下さい
どんな声でもいい
たったひとことでもいい
僕に・・

「叶わぬ夢」

またひとつ夢を失った
大人になるにつれて
夢は現実にかき消された
どんなに努力を積み重ねても
誰より大きな希望があっても
叶わない夢だってあることを
僕はこの何年間で
幾度となく教えられた


僕の夢は
どんなに描いても
真っ白い画用紙に
たどった線が残っているだけ
今だに1ピースも染まらない

「弱虫のレッテル」

果てしない地平線にまたがる虹を
どこまでも追いかけた小さな冒険は
すでに記憶の片隅
競争の世の中で見えなくなった夢
薄汚れた高い壁を乗り越える勇気も
どこかに忘れた

弱虫のレッテルを貼られ
いつのまにか
背中に背負ったリュックは空っぽだった


「硝子の破片」

強くなりたかった
自分に
泣き虫から卒業したかった

なのになんで
こんなに脆いんだろう
硝子の破片が
突き刺さったまま取れないよ

「鉄格子」

僕を縛り付ける重い枷
見上げた先に見えるのは
鉄格子のように張りめぐらされた電線
      
背中には真っ白な翼

飛び立つには狭すぎて
僕はいつまでもここから出られずにいる

「闇の国」

重い扉を開ける
広がる青い海
白い砂浜
眩しい太陽の下で
僕は寝転がって
ゆっくり流れる雲を
ぼんやりと眺めていた
 
明日にはまたいつもの生活が始まる
見えない影に脅えながら
都会の排気ガスと雑踏に紛れて
あの人込みの中へと戻る
息苦しい鎖から解かれた封印は
ほんの一瞬

僕を縛り付ける重い枷
夢見た自由の国
降り続く雨
暗い闇
ここに光はまだ届かない

「足跡」

雪の白煙が空に舞う
立ち止まる足跡を
辿っていけば
夢が見つかると信じていた

彷徨った森の中で
ちっぽけな時を放り出して
抱き締めた大地

「また旅にでも出ようかな」
僕を探す長い旅
たくさんの足跡を付けていこう

「MOON」

窓際から月のシャワー
気まぐれなかけひき
不確かな音色
誘惑

煌めく遠い光
導かれた幻
夢はその彼方
彷徨う月の果て

「迷路」

跳ね上がったスカートの裾に
昔の傷跡

壊れかけた鼓動

ひたすら遠回りしていた夏
     
夢から覚めた現実

「自由とは何か?」
「束縛からの解放!!」

常に見張られたこの町は永遠の迷路

「彷徨って」

渇いた大地の
気の遠くなる道を歩いた
求めるものは希望
両手をついて這いつくばっても
見つけられない明日

彷徨って 彷徨って
辿り着く道なき道

「扉」

解き放たれた銀の鎖
夢見た空は大きな闇
置き去られた時間の中で
蘇る記憶の断片 

引き裂かれた心から
生まれた不安と恐怖に
必死でしがみついた僕
自分と戦いながら
自分から逃げていた僕
捕らわれて見えなくなった明日
差し伸べられた君の手を
振り払う勇気さえなかった

自由という名の希望
自由という名の束縛

扉は一枚じゃないことに
誰も気づかない

見据えたこの目で真偽を問う
強がった言葉は街にのまれた
立てなくなった足を支えるのは
灯火
硝子のように脆い光

大きな闇の冷たいぬくもりの中で
僕は次の扉を開けた

「道」

現実と夢の区別もつかず
あるのは不確かな今
過ぎゆく今の片手には
孤独の渦と
バランスを崩した僕の足
まだここに道はない

「言葉の壁」

同じ日本の東と西
その狭間に僕たちは埋もれていた
伝わらない言葉に不安を覚え
優しささえ罪になる
震える鼓動を隠し
大人を演じる僕たち
壁を吹き抜ける風はない

「始まり」

瓦礫の下で産声を上げた
冷たい水飛沫を浴びて
世紀末の行末を願った
渾身にみなぎる力は
終わりではなく始まり

「橋の向こう」

橋の向こうに広がる
未知なる世界
足を踏み出せば
そこは天国か地獄か

船の汽笛は
耳鳴りするほど聞き飽きた
母の涙も海に消えた
残されたのは
形見のお守りと
行き先不明の記念切符

明日を道連れにして
誰も知らない橋の向こう
夢見た空を見上げた

「逃げる」

逃げる
傷つきたくないから
逃げる
傷つけたくないから
逃げる


卑怯だとわかっていても
後悔するとわかっていても
逃げる
遠くへ
逃げる


行くあてはない
何をすべきかも知らない
落ち込んで泣くくらいなら
逃げる
自分から
逃げる


戦う勇気はいらない
ただ欲しいのは
愛と抱擁
疲れ切った心を
癒してくれる腕


逃げる
ここから
逃げる
踏み出した一歩は
明日への晴れ舞台

「空間」

目を閉じると
静かな空間が私を包み込む
広がる世界の地平線にあるのは
どこかで見たことのある過去の断片


独り
わたしはそこに立っている
次から次へと溢れてくる渦に
何度も溺れそうになりながら
わたしは今ここにいる


この空間は優しい
それに
甘えてはいけないとわかっていても
わたしはここにしか
居場所が見つからない


いつの日か
月日を共にした人達が
いつもわたしの支えとなる
ただそれは
わたしの手によって
変化を伴っているかもしれないが


空間の歪みから生まれた
小さな光
これからわたしは
それに向かって歩もうとしている

「感覚」

だまって
しずかに
ねえ、きこえる?
おと


めをとじて
それからみるのよ
まっすぐ
やみのむこうの
ちいさなひかり

「旋律」

言葉や音楽が織り成す旋律
そこには歴史があり、愛がある
時にはは甘く
時にはは厳しく
旋律は心を支配する
憎しみもまた愛である
冷たさもまた愛である


美しい旋律は
気取った言葉や軽快なリズムではない
素直な心から溢れた素直な旋律である


「扉」

未来へ続くレールの上には
ひとそれぞれの扉がある
それがどんな色をしていて
どんな形をしているかなんて
問題じゃない

大切なのは
生きている間に
どれだけたくさんの扉を開けてきたかなんだ

「星降る夜に」

星降る夜に
きみと会おう
大きな空の下
草むらに寝転がって
夢を見よう


星降る夜に
きみと二人
果てしない空の下
どこまでも
追いかけっこしよう


星降る夜に
きみが笑う
「寂しくないよ」なんて
強がりながら
空の下のきみとぼく

「イヴの日には」

イヴの日には
君と二人で


部屋には
灯された一本のろうそくと
二人分のシャンパングラス
そして二人で作った
クリスマス料理


イヴの日には
君と二人で


クリスマスソングはいらない
ただ二人の
重なるメロディーがあればいい
大好きな君の
笑顔があればいい


イヴの日には
君と二人で


君と過ごす初めての夜
いつもより
君のぬくもりは優しい
この世界に
僕たちしか存在しないみたいに

「二人で創った宇宙」

二人で創った宇宙は
誰も手の届かないところにあって
フワフワ フワフワ
いつも不安定に浮かんでいる


二人で創った宇宙は
シャボン玉のように脆く
硝子のように壊れる
誰も触れずとも
それは突然訪れる


二人で創った宇宙は
二人だけのものではない
広く深い宇宙の中
きっと1秒すらかかっていないのだ
二人で創った宇宙の
二人で創った時間は

「サラサラサクラ」

サラサラサクラが散るよ
恋した二人の間を縫うように

サラサラサクラが散るよ
春に出会った風に紛れて
 
サラサラサクラが散るよ
悲しい思い出の歪みを埋めるように

サラサラサクラが散るよ
サラサラ サラサラ
サクラが散るよ

プロフィール

萩野 桂(はぎのけい)

Author:萩野 桂(はぎのけい)
京都在住。12月8日生 射手座 B型

亡き祖父である八木毅は、シェイクスピアの研究者で、英訳「アセンズのタイモン」他英訳本を出版。その傍ら、八木絵馬の名で俳句本も出版。そんな祖父の影響を受け、シェイクスピアに幼少より興味を抱く。また谷川俊太郎氏などの影響を受け、詩を書くようになる。
少しでも何かを感じて頂ければ嬉しく思います。

<出版>
新世研「ぼうけんだいすき」(絵本翻訳)
新風舎「たからのはこ」(詩集1編)
新風舎「ゆめのたね」(詩集2編)
新風舎「きみのかけら」(詩集3編)

<賞>
2006年文芸社 VA出版文化賞 ポエトリー部門特別賞
最近応募していませんが、また挑戦するため、ブログの一部を非表示にしています。

こちらもよろしくお願いします。
Facebookページ「萩野桂」
ツイッター「萩野桂」
pixta 写真販売中

なお、こちらにアップしている京都ページは、「京都散歩道」に移動しました。

ウェブマガジン「コスマグ」にも記事を書かせていただいています。
「kossmag おとながーるの京都暮らし&社寺さんぽ」

なお、当サイトに掲載されている個々の情報(文章・写真など)は、個人で楽しむ以外は無断で複写、複製、転載等、ご遠慮ください。 著作権はすべて、萩野桂(はぎのけい)にあります。

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